落語も戯曲も小説も書いた奇才・中島らも「明るい悩み相談室」

それはホンワカした衝撃だった。朝日新聞の「明るい悩み相談室」。明るい悩み、そんな悩みある? テレビで見た相談室長の中島らもは、コピーライターと名乗った。建物の骨格を作る会社のCMコピーを担当して、「家は焼けても骨組み残る」の案を提示、クライアントをア然とさせた。

常識を破る発想の彼が落語を創った。タイトルも「明るい悩み相談室」。演じるのは桂雀三郎。故・桂枝雀の二番弟子で、古典も新作も器用にこなす実力派。マクラで、らもの奇才ぶりを紹介。らもが自作の落語を演じると高座へ。10~15分長々とマクラをやり、こんにちは。こんにちは。誰もおれへんのかいな。こんにちは。勝手に上がったろ。ガラッと開けると、「あ、死んでる」。 その落語は、定年になって手持無沙汰のチャーリー浜口、人生相談でもやろうと自宅に「チャーリー浜口悩み相談室」の看板を上げる。と、玄関の戸を叩く人、トントントン「ワシ戸叩いてるワシ戸叩いてる」「どうぞお入り」戸を開けると、「戸開いた戸開いた。ワシ中入るワシ中入る」。男が入って来る。「先生いてはる先生いてはる。ワシ先生に挨拶する。先生に挨拶する。こんにちは」。この男、自分の考えや行動が勝手に口から洩れてしまうという性癖があり、困っているという。見ると頭に大きなこぶ。聞くとパチンコ屋で、玉出て来た出て来た、外れた入った、チューリップ開いた……と大声でやってたら、隣の男に「うるさい!」と頭を殴られたと言う。

桂雀三郎(上方落語家名鑑より)

 

聞いたチャーリー浜口、これは自分一人の手には負えん。あんたの家族の理解と協力が必要や、今度家族連れて来てくれと言うと、女房を連れて来てると妻を呼ぶ。声をかけると、「あんた私呼んだあんた私呼んだ私呼んだから私部屋入る」男とそっくりな妻が現れ大騒ぎ。びっくり仰天のチャーリー、1週間後に来てくれと夫婦を返す。ああ、えらい夫婦がいたもんや。ワシ頭痛なってきた。ワシバッファリン呑む。ああ、うつってしもた。

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まったく奇妙奇天烈な登場人物が出て来て大爆笑。初めて高座を見た時、主役を演じる雀三郎の速射砲のような口調と、雀三郎本人が持っているとぼけた味が加わり、たまらんおかしさだった。

落語の面白さの一つはストーリー展開だが、荒唐無稽だけではダメなのだ。あまり突拍子もないと、客がついて来ない。で、ストーリーを支えるのが人物設定。納得のいくキャラでないと説得力が生まれない。「悩み相談室」の男、かなりデフォルメされているが、われわれも思い当たる節がある。なにかやろうとして、ふと独り言を漏らしたり、考え事をしていて、思わずつぶやいていたり。さらに瓜二つの妻。笑いを倍増させた。世に似たもの夫婦は多い。行動だけでなく顔つきまで似る夫婦も。発想力抜群の噺だった。落語も戯曲も小説も書いた奇才だが、2004年に鬼籍に入った。享年52だった。(落語作家 さとう裕)

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