落語「天災」…無能なトップの下で我慢を強いられるのは限界でっせ

落語に「天災」という噺をご存じだろうか。全国の新型コロナウイルス新規感染者が連日25万人を超え、ついには岸田首相も夏休み中に感染する始末。危機管理ゼロでんなあ。落語作家のさとう裕さん落語案内です。(新聞うずみ火編集部)

まさに未曽有の大天災。世界中に蔓延した新型コロナウイルス。いったい、いつになったら収束の兆しが見えてくるのか。不安とともに怒りがふつふつ。けど、今回の怒りは厄介だ、持って行き場がない。そんな時に有効(?)なのが「天災」という噺。昔の人の知恵だが、これ参考になるのか、聞いて怒りが収まるか、火に油状態になるか、責任は一切負いませんが、ま、お付き合いを。

ご隠居の家へある男が飛び込んでくる。聞けば、仕事から帰ってきた家で嫁の態度が気に入らんと嫁に手をかけ、仲裁に入った実の母親にも手を上げたという。それに対して一向に反省の色を見せない男に、隠居は紅羅坊(べにらぼう)名丸(なまる)先生のところへ行って話を聞いて来いという。この先生は心学の先生だ。「心学」というのは、今はすたれてしまったが、江戸時代かなり流行った学問だった。

儒学の陽明学も心学と呼ぶ場合があり、区別して石門心学と呼んだが、これは石田梅岩(1685~1744)が京都で始めた。儒教と仏教と神道の教えをミックスして、庶民の生き方を分かり易く説いたもの。

石田梅岩

 

さて、くだんの男、先生の家へ。先生は辛抱、堪忍の心を説くが男は納得しない。そこでたとえ話をして聞く。道を歩いていて丁稚のまく水がかかったらどうする。男、丁稚をなぐる。では、道を歩いていて屋根から瓦が落ちて来て頭にあたったら、どうする。その家へ怒鳴り込む。空き家ならどうだ。家主の家へ怒鳴り込む。では、広い野原を歩いていて、夕立が降ってきたら、どうする。天道に降りて来いと怒鳴る。ほほう、天道は降りてくるかな。相手が天なら仕方ない。そうじゃ。人間あきらめが肝心。丁稚が水をかけたと思うから腹が立つ、天道にかけられたと思えば腹も立たない。

ま、こんな風に短気な男を戒めた。何でも仕方がない、少々のことは諦めろという教えは、江戸時代のお上に逆らえない庶民にとっては、ある種仕方なかっただろうし、一種の処世訓として成り立ったわけだが、現代社会ではどうだろう。相手が人間なら交渉のしようもあるが、相手は疫病だ。だからといって手をこまねいていてよいわけはない。その上、政府の対策もあまりにブザマだ。庶民の自粛疲れもピーク。医療の最前線にいる医療者の方々の疲れは、想像を絶する。飲食関係の自粛要請も、補償がちぐはぐ。

このコロナ、世界中でパンデミックだし、政府の打つ手も限られる。ある程度の自粛、我慢は仕方ないのだろうが、それにしても無能なトップの下で我慢を強いられるのは限界だ。

人間、我慢できることと出来ないことがある。ワクチンを打ってもらうのもお上任せ。それでも、ただただ辛抱しかないのだろうか。(落語作家 さとう裕)

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