大阪市立十三市民病院が「コロナ専門」 突然の決定 現場は悲鳴

大阪市淀川区の市立十三市民病院が新型コロナウイルスに感染した中等症の患者を受け入れる専門病院として、大型連休明けから本格的に稼働を始めた。松井一郎市長による突然の方針発表に病院は大混乱となる。病院全体がコロナ専門病院となるのは全国でも稀なこと。3週間足らずで100人を超える入院患者を転院させ、不安と戸惑いを抱えながら受け入れ準備に奔走した医療従事者らを襲ったのは、コロナ差別だった。(新聞うずみ火 矢野宏)

十三市民病院は、阪急神戸線の十三駅と神崎川駅のほぼ中間に位置する中規模総合病院。263床ある結核の指定医療機関で、地方独立行政法人「大阪市民病院機構」が運営している。内科や糖尿病内科、小児科、外科など17科を備えていた。特に、産婦人科は母乳による育児指導に定評があり、年間600の分娩を扱っていたという。

大型連休明けの7日。鉄筋コンクリート9階建ての病院に出入りする人はほとんどいない。正面玄関は閉鎖され、外来診察休止を知らせる大きな張り紙が掲げられていた。道路向かいに並ぶ処方薬局はどこも閑散としていた。

コロナ専門病院になる発端は、4月14日に大阪府庁で開かれた新型コロナの予防ワクチンなどの研究開発会合。大阪府や市、各医療機関の代表が参加した席上、医療の専門家から「無症状や軽症者にはホテルが用意され、重症患者向けの準備も進んでいるが、問題は中等症患者への対応だ」との意見が出た。中等症とは酸素吸入が必要なやや重い症状のこと。この席上、松井市長が大阪市民病院機構の理事長に対し、十三市民病院を受け皿とするよう指示したという。

病院との事前調整はなかった。院長ら医療関係者はその日の夕方のニュースで知った。このトップダウンの決定に患者から戸惑いの声が上がる。電話での問い合わせが殺到して、電話がつながらない状態が続いた。

■入院患者を転院

入院患者は130人に上っており、通院患者は1日平均500人、分娩予定も280件入っていた。

病院には5月1日に運営開始というロードマップが示された。医師や看護師、医療スタッフ、事務職員らは不安を抱えながら準備に奔走する。4月16日には初診外来と救急診療を中止し、24日には外来診療を終えた。

大変だったのが、患者を転院させることだった。

病院の正面玄関は閉鎖され、「外来診察休止」の張り紙が

 

匿名で取材に応じた医療関係者は「地獄のような毎日でした」と振り返る。

「長く通院している患者さんの中には泣き出す人、怒る人もいました。がんの手術を予定していた患者さんも移ってもらうしかなく、ただでさえしんどい抗がん剤治療をしている患者さんも自宅から遠い病院を紹介せざるを得ない状態でした。また、末期がんの患者さんにも負担をかけねばならず、みなさんの気持ちを思うと心苦しく、医師も看護師も泣いていました」

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