イージス・アショア配備 住民の力で事実上撤回
- 2020/6/18
- 平和

秋田県と山口県を候補地とした地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、河野太郎防衛相が2000年6月15日、配備停止の方針を示した。急転直下の方針転換。事実上の白紙撤回である。(新聞うずみ火 栗原佳子)
イージス・アショアは地上から迎撃ミサイルを発射、飛来するミサイルを大気圏外で撃ち落とすシステム。2017年12月、官邸主導で米国製のイージス・アショアの配備が決まった。防衛省は25年度の運用を目指し、陸上自衛隊の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市・阿武町)を「適地」とする報告書をまとめた。その後、秋田県の地元紙「秋田魁新報」が新屋演習場を適地としたデータミスを特報。地元の反発も強まる中、同省は今年5月、新屋への配備を断念し、秋田、青森、山形の3県を軸に新たな候補地を検討していた。
河野防衛相は配備中止の理由について「ブースター部分を落下させるための技術的な不備が見つかり、改修にコストや時間がかかるため」と説明した。むつみ演習場でミサイルを発射した場合、演習場内に確実に落下させることができないとわかったという。ブースターとはミサイルの推進を補助し、上空で切り離される装置。重さ200キロ以上もある。改修には約12年、4500億円とされる配備費用も2000億円以上加算される可能性があり、「合理的ではない」と判断したという。
むつみ演習場から海に向かってレーダーが照射される場合、真下にあるのは阿武町だ。過疎地である同町が力を注いできたのが移住者の受け入れを核にした街づくり。充実した定住支援策が功を奏し、転入者が徐々に増え続けた矢先、「国策」が降ってわいた。山口県は安倍首相の地元。同町も保守地盤だが、計画には有権者の過半数が反対している。自民党の花田憲彦町長も一貫して反対の姿勢を打ち出してきた。
19年6月14日、同町で開かれた住民説明会。住民からは「むつみ演習場ありき」「『防御』というが相手からは攻撃対象になる」などと怒りの声が次々と上がった。前週の秋田の説明会では、直前にデータミスが暴露されたうえに防衛省職員が居眠りし、紛糾したばかり。防衛省側は防戦に追われたが、それでも、問題のブースターについては、「区域内(むつみ演習場内)に落下させるための措置を確実に講じる」と断言していた。
そもそも、なぜ新屋(秋田)とむつみ(山口)だったのか。説明会で防衛省側は北朝鮮を名指ししたうえで、「新屋とむつみに配備すれば24時間365日、我が国を弾道ミサイルの脅威から守ることができる」と説明した。新屋とむつみは北朝鮮方面とハワイ、グアムを結ぶ軌道上にあり、日本ではなく、米国防衛のための「適地」とも指摘されている。配備は、安倍首相とトランプ大統領との首脳会談直後に突然閣議決定され、国会審議もなく購入が決まった。
「イージス・アショア配備計画の撤回を求める住民の会」代表の森上雅紹さんは「配備中止は当然のこと。ブースターはもちろん水や電磁波などたくさんの問題がある。防衛省との交渉も続けてきたが、『大丈夫』というばかりでまともな説明はなかった。粘り強い訴えが国を動かしたと思う。この『成功体験』が辺野古や南西諸島にも広がってほしい。安倍首相は配備中止でなく、『白紙撤回』の閣議決定をするべきだ」と話した。