東京電力福島第1原発の現状と課題 「負の遺産」100年計画で

史上最悪の「レベル7」と評価された東京電力福島第一原発事故発生から10年。京都大複合原子力科学研究所(旧京大原子炉実験所)助教の今中哲二さんが現状と廃炉に向けた課題について語った。(新聞うずみ火 矢野宏)

質問に答える今中さん㊧

 

■女川原発救った5メートル高い敷地

三陸沖を震源とするマグニチュード9・0の大地震「東北地方太平洋沖地震」が発生したのは2011年3月11日午後2時46分。震源から東京電力福島第一原発は180キロ、東北電力女川原発までは130キロとこちらの方が近い。高さ13メートルを超える津波が二つの原発を襲来したが、女川原発は助かった。なぜか。福島第一原発の敷地の高さが10メートルだったのに対し、女川原発は14・8メートル。5メートルの差が命運を分けた。福島第一原発は非常用電源が津波でさらわれ、全電源を喪失。冷却できなくなった核燃料が過熱し、12日には1号機が水素爆発を起こした。14日に3号機、15日には定期検査のため運転を停止していた4号機も爆発。1~3号機の原子炉は炉心溶融(メルトダウン)を起こした。

■停止中の4号機なぜ爆発した?

2号機が爆発しなかったのは、1号機が爆発した衝撃でたまたま建屋側面のパネルが開き、2号機の中の水素が外部へ排出されたため。4号機が爆発したのは当初、使用済み核燃料プールの水がなくなり、核燃料が冷やせなくなったからではないかと考えられた。そうなると福島第二原発にも近づけなくなる。アメリカの原子力規制委員会は原発から半径80キロ以内に滞在するアメリカ人に避難勧告を出した。調査の結果、3号機の排気筒を4号機も共用していたことが判明。3号機で発生した水素が排気筒を通って4号機へ流入したのが原因だった。

■誰も刑事責任を問われていない

東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人が検察審査会の議決により、強制起訴された。巨大津波への対策を怠ったことで業務上過失致死傷罪に問われたが、東京地裁は19年9月、「津波による事故を予見可能だったとはいえない」として無罪を言い渡した。2008年には東電内部の作業チームが福島第一原発に15メートルを超える津波が来る可能性があることを指摘。防潮堤をつくる計画もできていたが、旧経営陣が握りつぶした。

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■課題① 使用済み燃料の取り出し

事故時に核燃料がなかった4号機は14年末に取り出し作業を終えた。2019年4月から3号機で取り出し作業を始め、2021年2月28日に核燃料566体を取り出した。建屋内は放射線量が高いため、ほとんどの作業は約500メートル離れた操作室から遠隔で行われた。機器やクレーンの不具合が続出。プール内に入ったがれきや取っ手が変形した燃料などもあって難航。1、2号機には計約1000体が残っており、東電は24年度以降の取り出し開始を目指している。

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