森裕之・立命館大教授に聞く 「都構想」百害あって一利なし

最初は大阪市だけでなく、堺市や周辺市も全部含めて特別区にするという計画でした。すべての権限と財源を吸い上げられますから。
「都構想」推進のために掲げた政治スローガンは「二重行政の無駄をなくす、豊かな大阪をつくる」です。今回、府市は「二重行政の廃止による改革効果額」は140億円だと言っています。しかし、このほぼ全てが二重行政とは関係のないもの、廃棄物処理の民営化とか職員の削減とかです。それらを除いた、二重行政の廃止で生み出される財政効果は全体で4000万円。大阪市に限ってはほとんどゼロです。前回、私が府市の資料で計算しても2、3億円でした。
一方で、新たに必要となる財政負担は大阪市(特別区)だけで初期コストが520億円、年間運営コストが24億円と試算されています。特別区をつくったら庁舎もいまの区役所の規模では足りない。庁舎の整備、システムの改修などもお金がかかります。

そもそも二重行政の廃止と言うなら、何が二重行政なのかという定義が必要です。市道と府道のどちらかを無くすのか? そんな馬鹿な話はないわけです。
昨年、二重行政のムダをなくすと言って、市立住吉病院が閉鎖されました。住吉病院は公立病院のモデルだったと思う。単に何科があったとかでなく、地域が抱える問題や病理を吸収していたのです。例えば、虐待を疑われる子供がいたら、住吉病院では教師をはじめ関係者で協議していました。公立でないとなかなかできません。最前線でキャッチした情報を行政が施策に反映させる。公立病院のあるべき関係だったと思います。
行政の一番大事な仕事は「表に出てこないものを支える」こと。表に出てこない社会的弱者はものすごく増えていて、特に大阪市などは深刻です。だから住吉病院のようなものが必要なんです。それを切ることは社会的弱者を切ることと同じ。そんな現場を知らずに、二重行政だと平然となくしていく。もう怒りを通り越して本当に情けないです。
それでも維新が「都構想」にこだわるのは、やるといってきたからでしょう。

万博は国が主体となって誘致するものです。大阪の人たちが望み、それが問題ないのなら府市が協力しないということは考えにくい。
対立するのが悪いのかというと違うと思います。このイベントをやると税金が上がるし防災上も危ない、環境破壊も深刻だというのなら、府がやるといっても市は反対すべきです。対立しているから「府市合わせ(不幸せ)」なんてありえない。

15年に万博予定地が検討されたとき、対象になったのは万博記念公園や花博の跡地など6カ所。それが16年にいきなり夢洲が候補に上がった。もともと産業廃棄物やしゅんせつ土の処分場として整備され、今もほぼ海。万博会場建設のために22年度中に155ヘクタールを埋め立てしなければならない。
総事業費は7年間で950億円。財政負担は基本的に所有者である大阪市が負います。地下鉄大阪メトロ(大阪市が100%株式保有)の延伸540億円や埋め立て費用136億円、上下水道の整備132億円など。また万博会場建設費1250億円は国、経済界、府市が3分の1ずつ負担することになっています。東京五輪も7000億円だった整備費が3兆円を超えた。万博もおそらく膨らむでしょう。

各種世論調査によると大阪ではIR(統合型リゾート)反対の市民が大多数。にもかかわらずIR誘致は既成事実であるかのように進められています。開業は24年の予定で万博の前年。大阪市は万博決定の直後に夢洲に延伸される地下鉄の整備費用のうち、200億円をIR事業者選定の事実上の条件にするとしています。万博のためなのにカジノ業者に金を出させる。政府のIRの基本方針はまだ出ていないのに、春から事業者を募集する。万博をカジノのための口実にし、出来レースにしか思えません。

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