「在日コリアンが不法占拠している」フェイクニュース信じて犯行に及んだ22歳

京都府宇治市のウトロ地区で起きた放火事件。非現住建造物等放火罪に問われた22歳の有本匠吾被告は濃いグレーのスーツ姿で入廷した。髪は肩まで伸び、きゃしゃな体ながら犯行は大胆不敵。ライター用のオイルを使用した発火装置を1週間かけて作り、犯行に及んだという。(新聞うずみ火 栗原佳子)

裁判の争点は、放火事件が人種差別目的のヘイトクライム(憎悪犯罪)と認定され、差別的動機が量刑に反映されるかどうか。国内では16年にヘイトスピーチ解消法が施行されたが、罰則のない理念法にとどまっている。

 

初公判後、ウトロ地区の住民側の弁護団が記者会見を開いた。弁護団長の豊福誠二弁護士は「人種差別に起因する犯罪は量刑を重くするのが国際的なスタンダード。ヘイトクライムを適切に処罰する法律は日本にないが、被告は動機を語っている。裁判所は事実認定をして、人種差別を認めた場合には、量刑判断の情状としてほしい」と期待を込めた。ウトロ平和祈念館を運営する「ウトロ民間基金財団」の郭辰雄理事長は「平穏な日常が突然、放火という重大犯罪によって崩された。『悪感情』という言葉には違和感がある。事件を引き起こしたのは在日コリアンへの差別感情。属性によりいつ理不尽な被害を受けるかもしれない現実を、司法の場で明らかにしてほしい」と話した。

 

被告はウトロ地区を「不法占拠」とするネット情報を信じ、犯行後も注目を期待した。龍谷大学の金尚均教授(刑法)は「いわゆるフェイクニュースがヘイトスピーチにつながり、ヘイトクライムにつながった事案」と指摘した。

開館した平和祈念館ではGW期間中、歌や踊りなどイベントが行われた。広場にはウトロの原型「飯場」を移設。1階はホールで、2階展示室には歴史を伝えるパネルや生活雑貨、住民がデモや座り込みで抵抗する写真がある。  館長で「ウトロを守る会」代表の田川明子さんは事件にも触れ、こう話した。「ウトロは戦争で生まれた街だから発信するのは平和。出会えば分かり合える。彼はネットの世界で妄想を膨らませていたのかな。実際にウトロの人たちと会っていたら、こんなことをしなかったかもしれない」

 

次回公判は6月7日。被告人質問などが行われる。

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