「『貴様らが死んでも1銭5厘の葉書一枚でいくらでも補充できる』と上官は言った」瀧本邦慶さんが遺した講演から(3)

1942年6月のミッドウェー海戦で日本海軍は4隻の空母を失った。空母「飛龍」に航空整備兵として乗船していた瀧本邦慶さんは九死に一生を得て日本へ戻り、入院する。ミッドウェー海戦での惨敗はいわば「国家機密」。帰国した負傷兵は一つの病棟に隔離され、生存者は次々に最前線へ送られていった。(新聞うずみ火 矢野宏)

瀧本邦慶さんら負傷兵は海軍病院に入院したが、一つの病棟に監禁された。後日、看護婦が持ってきた新聞を見て合点する。4隻の空母が沈んだのに、大本営の発表は1隻のみ。

「大本営は嘘をついている。これまでもこういうことをしていたのかと不信感を持ちました。国は都合の悪いことは隠し、国民には嘘をつく。これが戦争の一つの形です」

ミッドウェー海戦の敗北はいわば「特定秘密」。生存者は次々と最前線へ送られる。瀧本さんの転属先は南洋のトラック諸島(現・ミクロネシア連邦のチューク諸島)だった。

着任して1週間後、B29爆撃機の空襲を受け、基地はすべて破壊されてしまう。制空権も制海権も米軍に握られ、食料、武器・弾薬、医薬品など、内地からの輸送が完全にストップしてしまう。

「半年後、栄養失調で餓死者が出てきました。死ぬ時は骨と皮だけ、人間の姿ではありません。頭ははっきりしているから余計つらい。まさに生き地獄です。朝になり、隣で寝ている戦友が死んでいるのに気が付かないこともありました。『私たちは一体何のために、誰のために戦争をしているのだろうか』と何度思ったことか。今を生きることが精いっぱいで、日が暮れると、『ああ、今日も何とか生き延びた。死なないで良かった』と思う毎日でした」

トラック島には、陸海軍合わせて4万人の兵士がいたが、2万人が餓死した。

「よう聞いておいてくださいよ」。瀧本さんは語気を強めた。

「海軍は、部隊の中で大きく二つに分かれていました。下は『下士官』と『兵隊』、上は海軍兵学校を出た『将校』です。私たち下士官兵に1日支給されるのは小さなイモ1個。ジャングルの中に入って草を取ってきて海水で煮て食べる、青虫のような生活が半年続きました。我々はそういうものを食べていたにもかかわらず、10人ほどの将校たちは何を食べていたか。『銀飯』(白ご飯)を食べていたのですよ。こんなことがありますか。同じ人間で、同じ海軍で、同じ戦地にいて、生きるものも死ぬものと一緒と言いながら、これが実態だったのです」

瀧本さんの声がさらに大きくなった。

「将校は人間の命、下士官兵は虫けらの命という考え方が海軍にはあるのです。直接、戦闘行為をやるのは下士官兵です。将校がやるのではありません。よく考えてみると、わが国の軍隊ほど人命を軽視する国はありません。常々、上官からよく言われました。『貴様たちがいくら死んでもその補充はすぐできる。1銭5厘の葉書一枚でいくらでも徴兵できるのだ』と」

軍国少年として17歳で海軍を志願した瀧本さんだが、「お国のために」と生きてきたことに疑問を抱く。

「ああ、これで自分の命もこれまでか。23歳の人生を誰のために死ぬのかわからぬままにはるか南洋の小島で、人知れず餓死してヤシの肥やしになって消えてしまう。それがなんで国のためなのか。こんな馬鹿な話はない。こんな死に方は納得できないと思いました。その時、私は国に騙されていたと気づいたのです」

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