「放火と聞き、やはりそうだったか…」燃やされた京都・宇治市ウトロ地区

ウトロ

京都府宇治市にある在日コリアンの集住地区「ウトロ」を襲った突然の火事。京都府警は当初、「漏電による失火」と発表した。ところが昨年12月、事態は急転する。(新聞うずみ火 矢野宏)

ウトロ住民の集会所である「南山城同胞生活センター」代表で、祈念館副館長の金秀煥(キム・スファン)さんは、大きな火柱が立ち上がるのを目の当たりにしたと振り返る。
「焼けた7軒のうち2軒は民家でした。1軒は延焼で2階から火が付きました。そこは子ども部屋。いつもは帰宅している時間ですが、たまたまその日は不在でした。もう1軒は2階に家財道具などが置いてあり、家族の思い出の品がすべて焼失してしまいました」
当初、京都府警は「漏電による失火」と発表した。ところが昨年12月、事態は急転する。放火の疑いで奈良県在住の22歳の男が逮捕されたのだ。
この男は「ウトロ事件」の1カ月前、名古屋市内の在日本大韓民国民団(民団)愛知県本部と隣接する名古屋韓国学校の排水管に放火した容疑で愛知県警に逮捕され、器物損壊などの罪で名古屋地検に起訴されていた。
名古屋での事件の取り調べで「余罪」が判明したとされる。一部報道では「日本人の注目を集めたかった」と供述したという。
事件後に話を聞いた金さんはこう語っていた。

「最初は漏電だと聞いて安堵していたのですが、放火と聞き、『やっぱりそうか』と。残酷な現実を突きつけられました。ウトロで火事が出たら放火だと思うのは異常な事態ですし、そうあってほしくなかった。この社会にかける淡い期待も無残に崩れてしまいました」
ヘイト街宣にさらされてきたのはウトロ地区も例外ではない。ヘイトスピーチ解消法が制定された2016年までの7年間で、少なくとも13回の被害を受けているという。
さらに、男の逮捕を報じたインターネットのニュースには「よくやった」「愛国無罪」「放火はダメだが気持ちはわかる」などの書き込みが延々と続いた。「ウトロは不法占拠」というデマを信じてのヘイトだ。
一方で放火事件を受け、多くの日本人から心配の声が寄せられて励まされたと、金さんは振り返る。
「このような事件が起きてしまう社会は極めて不健全で、それは日本人にとっても在日にとっても住みにくい社会。事件にしっかり向き合い、すべての市民が力を合わせ、住みやすい社会をつくるきっかけにしなければと思います」

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