「教育現場で何が起きているのか」追うドキュメンタリー映画「教育と愛国」(上)

毎日放送(MBS)製作のドキュメンタリー映画「教育と愛国」が5月13日から全国で順次公開される。監督は教育問題を長年取材してきた同局ディレクター、斉加尚代さん。2017年に放送したテレビドキュメンタリーに最新の取材を加え、教育現場で何が起きているのか、政治がいかに介入してきたかに迫った。(新聞うずみ火 栗原佳子)

映画の骨格を成すのは、教科書をめぐり起きた、この20年余りの不穏な動きだ。日本軍「慰安婦」だったと韓国で金学順さんが名乗り出たのは1991年。日本政府は93年に河野談話を発表。中学歴史教科書に「従軍慰安婦」について記述されるようになった。

しかし保守派の反発は大きかった。97年には「新しい歴史教科書をつくる会」「日本会議」が結成され、自民党内にも「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が組織され、安倍晋三氏が事務局長に就いた。教科書会社への攻撃は激しさを増した。

2001年の教科書採択では、加害記述を充実させた大手教科書会社が標的となり、倒産に追い込まれた。「戦争の被害も加害もどちらも子どもたちに学んでほしい」。編集者や執筆者が託した思いとは裏腹に。

06年には第1次安倍政権下で教育基本法が改正され「愛国心条項」が盛り込まれる。高校歴史教科書の検定で沖縄戦の「集団自決」記述から軍命令の表現が削除され、11年の教科書採択では「新しい歴史教科書をつくる会」の流れを汲む育鵬社がシェアを伸ばした。12年に第2次安倍政権が誕生、17年には道徳が教科に格上げされた。「教育と愛国」の取材は、この道徳教科化を契機として始まった。

初めての小学校道徳教科書の検定。『国や郷土を愛する態度に照らし』不適切だという修正意見がつき、教科書会社は、「パン屋さん」を和菓子店に差し替えた。

「地域を歩いて、地域が大好きになるという小1の『にちようびのさんぽみち』という物語です。パンの業界団体に取材しましたが、戦後、学校給食で学校教育を支えてきた自負がある。それが、愛国心が足りないと外されてしまう。一見、くすっと笑ってしまうような出来事に検定のおかしさが凝縮されているのではないかと思いました」と斉加さんは振り返る。

沖縄に関する作品をいくつも手がけてきた斉加さんには、沖縄を揺るがせた「集団自決」の軍命削除問題ともつながって見えた。教科書検定はどのように行われるのか。保守系の教科書執筆者や政治家にも取材を重ねた。育鵬社執筆者で歴史学者(東大名誉教授)の伊藤隆氏は育鵬社の教科書が目指すものを問う斉加さんにこう答える。「ちゃんとした日本人をつくる」。ちゃんとしたとは? 「左翼ではない」「反日ではない……」。

テレビ版「教育と愛国」は2017年度ギャラクシー賞大賞を受賞。18年、東京のドキュメンタリー映像祭でも上映された。その際、作品を見た映画監督らから劇場版にすることを強く勧められた。

 

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