入管行政の実態を告発したドキュメンタリー映画「牛久」

牛久

名古屋入国管理局でのスリランカ人女性ウィシュマさんの死亡事件から1年。日本の入管制度の実態を告発するドキュメンタリー映画「牛久(うしく)」が公開された。米国出身のトーマス・アッシュ監督が隠しカメラで面会室の悲痛な肉声を記録した。(新聞うずみ火 栗原佳子)

タイトルの「牛久」は茨城県牛久市にある東日本入国センターの通称名。全国に17カ所ある入管収容施設の一つだ。在留資格を失った外国人が収容されている。理由は様々だ。宗教や政治、紛争など母国で迫害されて日本に逃れて難民として保護を求め、認定を受けられないままに長期収容を強いられている人たちも多い。日本の難民認定率は0・4%。先進国の中で極めて低い。

監督が初めて「牛久」を訪れたのは2019年。ボランティアの友人に誘われ面会に赴き、衝撃を受けた。心身を病んだ人、命がけのハンストを敢行する人。「このままでは誰かが死んでしまう。証拠として残さねばという使命感でした」。撮影・録音禁止の面会室に、厳しい規制をくぐりぬけてカメラを持ち込んだ。

9人がアクリル板越しに顔出しの撮影に応じた。難民申請を何度も却下され長期収容されているデニスさんは精神的に追い詰められ、自殺未遂を繰り返していた。政情不安の母国を命からがら逃れたピーターさんは「母国で死んだほうがよかった」と吐露する。

また牛久は男性のみの施設だが、性自認が女性という人も収容されている。その一人、ナオミさんの訴えは切実だ。

新型コロナの感染拡大で、牛久でもクラスター発生防止のため身柄拘束を解く仮放免が急増した。しかし、働くことも禁じられ、生活保護を受けることもできない。国民健康保険にも入れない。

1975生まれの監督は20年前、国際交流プログラムで来日。原発事故後の福島の子どもたちをテーマにした作品などを制作してきた。入管行政の闇に迫る同作品を、特に日本人に観てほしいという。「映画を観て終わりではなく、この問題を解決するために行動していただきたい。法律を変えるためにも、投票という意思表示をしてほしいです」

関西では京都シネマで上映中。4月2日から大阪・第七芸術劇場神戸・元町映画館でも近日上映。

 

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