
大阪府と大阪市が推進するカジノを中核とする統合型リゾート(IR)をめぐり、誘致の賛否を問う住民投票の実現を目指す市民団体による署名活動が3月25日に始まった。巨額の納税者負担が直前になって浮上したが、IRの事業計画である「区域整備計画」案は24日、府議会で可決され、29日には市議会で可決される公算が大きい。大阪はこのままカジノと共存の道を歩むのか。住民の意思を問うことなく進む計画に「待った」をかけたいと、一筆一筆を積み重ねていくという。(新聞うずみ火 栗原佳子)
実施するのは市民団体「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」。府知事に住民投票条例制定を請求するためには府内の有権者50分の1以上、約15万筆以上の署名が必要で、同会は5月25日までの2カ月間で20万筆以上を集めたいとしている。
IRをめぐっては、府と市が昨年12月、米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスのコンソーシアム(共同事業体)と策定した「区域整備計画案」を公表。大阪湾の人工島「夢洲」にカジノや国際会議場、展示場、ホテル、劇場などを建設し、年間来場者数は2000万人、経済波及効果は1兆円超を見込む。早ければ2029年秋の開業という青写真だ。
しかし、この段階になって、府と市は「IRに公金は使わない」という前言を翻した。市は夢洲の土壌汚染や液状化対策のため790億円の負担を決定。2025大阪・関西万博跡地の整備も含めると1578億円の負担額になると試算した。さらに2月16日に市議会で行われた運営事業者「大阪IR株式会社」(オリックス、MGM、関西企業など20社が設立)の代表取締役2人の参考人招致では、地盤沈下対策でも追加負担が生じる可能性も浮上した。
それでも府議会は3月24日、区域整備計画案を可決。市議会でも29日に可決される可能性が高い。府議会単独過半数、市議会第1党という、大阪維新の会が圧倒的な力を持つ議会構成上、既定路線だ。両議会の承認を得て提出期限の4月28日までに整備計画が国に申請され、国が認可すれば、府と大阪IR株式会社が「実施協定」を締結を結ぶ。35年、延長すれば65年という異例の長期契約になる。
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