タリバン復活前、アフガニスタン女性3人の決断とは… 映画「明日になれば」全国上映

2021年8月8月、タリバンが政権を掌握したアフガニスタン。タリバンは「シャリア(イスラム法)の枠組みの中」で女性の権利を認めるとしたが、中等教育からの排除など女性への抑圧が強まりつつあることが報じられている。そんな中、いま、全国で上映されているのがカブールで生きる女性3人のドラマをオムニバス形式で描いた映画「明日になれば~アフガニスタン、女たちの決断~」(83分)。1985年生まれのサハラ・カリミ監督(36)がタリバン復権前の2019年に製作した初の長編劇映画だ。(新聞うずみ火 栗原佳子)

 

主人公の1人目は身重の主婦、ハヴァ。義理の父は大きなお腹の彼女を気遣うこともなく用事を次々言いつける。義母の介護に追われ、連日のように友人を自宅に招く夫には、もてなしの準備も急かされる。そんな彼女の唯一の安らぎは、お腹の子どもに話しかけることーー。2人目はニュースキャスターのミリアム。浮気性の夫に悩まされ、7年間の結婚生活に終止符を打とうとするが、夫は復縁を迫るばかり。そんなとき、妊娠が判明するーー。3人目は18歳の少女アイーシャ。いとこのプロポーズを受け入れ、親せきに祝福されながら結納の日を迎える。しかし、実は彼女には親にもいえない秘密があってーー。

サハラ・カリミ監督

 

主婦、教育を受け自立した女性、中産階級のティーンエイジャー。年齢や生活環境、社会的背景が異なる3人の女性たちは共通する試練に直面し、男性優位の家父長制社会の中で苦悩する。それでも、それぞれのやり方で抗い、運命を変える道を選び取る。

 

カリミ監督はイランのアフガニスタン難民2世。15歳の頃、2本のイラン映画に出演したのを機にスロバキアに渡り映画製作を学んだ。短編映画やドキュメンタリーを30本以上製作し、国際映画祭でも多数受賞するなどキャリアを積み重ね、12年、アフガニスタンへ帰国した。そこに立ちはだかったのが古い因習の壁だった。「スロバキアでの生活が長く、思考や行動様式がヨーロッパ式の部分が大きいので、アフガニスタンに戻ったときには、ありのままに受け入れてもらえると思っていました。しかし、男性優位の伝統的な社会で、女性であることで闘わざるをえない毎日でした。女性は謙虚で自分の意見をはっきり言わないことが美徳。男性の言うことを聞くべきだと」

 

一貫して女性をテーマにしたドキュメンタリーを製作。同時に2年あまり、国内各地を回り、大勢の女性たちと対話を重ねた。その実在の女性たちの姿を反映し、「明日になれば」の三者三様の物語を紡いだ。

 

俳優とスタッフ全員アフガニスタン人で製作された「明日になれば」は19年のヴェネチア国際映画祭にも正式出品。同年、カリミ監督は女性として初めて国営映画製作会社「アフガニスタン映画機構」の会長にも選ばれた。この頃、国内では若い世代を中心に女性たちの社会進出も徐々に進んでいた。しかし、2021年8月15日、タリバンがカブールを掌握。タリバンを批判してきたカリミ監督は、着の身着のままで国外へ脱出せざるをえなかった。

 

「アフガニスタンの女性たちが闘い、あるレベルまで達成された基本的な人権が、タリバンが戻ったことによって、また1から声を上げなくてはならない状況になってしまいました。国際社会の中で、アフガニスタンの女性について語ることが私の義務だと思いますし、日本の方たちにも目を向けてほしいと思っています」

 

明日になれば」。関西では元町映画館で近日上映。

 

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