「真相解明という検察本来の使命が置き去りに…」村木厚子さん「日本型組織の病を考える」

障害者郵便制度悪用事件で逮捕された4人のうち、3人は検察側のストーリーを認めて保釈されたが、否認した村木さんだけが起訴後も勾留が続いた。その期間は164日間にも及ぶ。検察という組織について、村木厚子さんはこう指摘する。なぜ、こんな建材事件が起きたのか。(新聞うずみ火 矢野宏)

「閉鎖的な組織なので、世の中の感覚とズレがある。例えば、『執行猶予がつけば大した罪じゃない』と言われました。そういう感覚が検察全体に蔓延しているのでしょう。しかも体育会系で、『このストーリーで行く』と言われると、やめましょうと言いづらい。国民から『正義の味方』と期待されており、国民の信頼を失いたくないから軌道修正できないのでしょう。裁判が始まると勝つことだけが至上命令となり、真相解明という本来の使命が置き去りになっていると思います」

「組織の病」は検察だけではない。財務省の公文書改ざんについてはどう思うのか。

冤罪事件を振り返る村木さん=2018年12月、MBSラジオ

「役所の仕事の中で記録はとても大事なもの。仕事の土台になるものだし、仕事の検証にも欠かせません。だから、郵便不正事件にも決裁文書が残っているか確認しました。検察と構図が似ており、建前と本音があまりにも乖離しているのではないでしょうか。『忖度はいけない』というのは建前で、本音では『忖度があったと思われる文書があるのはまずいぞ』と思った。お国のために仕事をしているのだからとか、大義のためなら、少しぐらい隠すとか、ごまかすとか許されるのではないかという甘え、驕りが心の中に忍び込んできたのではないでしょうか」

では、どうすればいいのか。村木さんは二つ提言する。

「一つは、建前通りに行動せざるを得ない明確なルールやシステムを作ること。検察の場合、適正な取り調べをしなければいけないとわかっているけれど、早く自白させたいと思えば強引な取り調べが多くなる。それならば、取り調べはすべて録音・録画してしまえば、無理な取り調べをする余地がなくなるのではないでしょうか。二つ目は、研修です。研修を繰り返しやることで、組織がそれを大事にしているということがわかる。それをないがしろにした時には、組織は自分を守ってくれないとわかるわけです」

組織の中で間違ったと思っても引き返せないことも少なくない。村木さんは「杭」を例にとり、「大きな池の中にある1本の杭に立っていたら、いつか池に落ちるのではないかと不安です。でも、2本、3本とあれば安定するだけでなく、動くこともできるわけです」と説明し、こう言い添える。

「日大アメフト部の学生さんも反則を犯すまで、ずっと1本の杭の上に立っていたのでしょう。だけど、自分で会見し謝罪して引き返した。思い切って杭から下りてみたら別の杭があった。自分がこれまでやってきたことは間違いだったことに気づいたのではないでしょうか。杭を何本も用意しておくのは自分を守るためにも大事なことだと思います」

村木さんは15年に退官後、困難を抱える若い女性を支える「若草プロジェクト」や累犯障害者を支える活動を行っている。

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